あなたの語りには、価値がある。/ 当事者の語りプロジェクト

連載3回目

葛藤があったとしても、それでも一人暮らしをしたい。

MAI KATO

文/山﨑彩恵 : 写真/嶋田拓郎

脳性麻痺・板橋区在住|加藤舞(かとうまい)

1996年生まれ。社会福祉士。板橋区在住。脳性麻痺による、四肢体幹機能障害、痙直型。日常生活のほぼ全てに介助を要する。小中高と特別支援学校に通い、ルーテル学院大学へ進学。2018年3月卒業。現在は、家族と同居中。将来は一人暮らしを考えている。2018年11月から、ヘルパー利用を開始。2019年4月に、現在の居宅介護と重度訪問介護の利用体制に落ち着く。 2019年1月から、「ユニラボねりま」で地域活動中。

目次

日々の生活の中で続く葛藤。他人介護か家族介護か。

――家族構成をお聞きしてもよろしいですか?

加藤:家族は父と母と、双子の姉がおりまして。私が妹です。

――そうなんですね。厳しいお父さんお母さんでしたか?それとも優しい方でしたか?

加藤:うーん、どうなんだろう。母は私がやりたいと言えば、それに対して、「ああじゃないの、こうじゃないの」というよりは「あなたがそう思うんならとりあえずやってみればいいんじゃない?なんでも」という感じですね。私が迷ったらアドバイスはくれるけど、それは絶対的なものではなかったです。これまでも、あくまでそのアドバイスは参考にはするけど、最終的にどうするかを決めるのは自分だったかなと思います。

――お母さんは心配のあまり先回りしてしまう人もよくいますけど、そうではなさそうですね。

加藤:先回りというのは例えば「あなたはこうなんだから、こういうふうにしなさい」みたいなイメージですか?

――そうですね。心配のあまり「それは難しいんじゃないかしら」みたいなことを度々言ったり。

加藤:父も母も、「こういうのがやりたいんだ」と言えば、リスクを伝えてくれますね。「あなたが思っているふうだけじゃなくて、こういう側面もあるかもしれないよ」という意味で。そういう助言を踏まえて、その都度自分で考えて、私が最終的に決めている、という感じなので、先回りする感じではないかもしれないですね。

――ご家族との関係性を加藤さん自身はどう思っていますか?

加藤:私の場合、家族との関係はどうなのかなぁ?たとえば、母とは結構いろんな考え方が似てるので、あんまり衝突はないですね。

天畠:家族のしがらみを感じることはありますか?

加藤:そうですね、全く感じないということはないですね。切っても切れないというか。だから、いずれは自立しようかなぁという考えもあって。姉と私、どっちが先に一人暮らしをするかまだわからないんですけど、自分が動かないと変わらないのではないかと思ったりもしています。まわりに求めてばっかりだと難しいのかなというのはありますね。

――いきなり一人暮らしするのは、やはりハードルがどうしてもありますよね。いきなりそこに飛び込むのはかなり勇気がいると思うんです。でも、たとえば家族と同居しててもこの時間、少ない時間数かもしれないけど、まずは一定の介助の支給時間が取れて、ヘルパーとその時間は一緒に活動する。その姿をご家族も見て「あ、一人暮らし本気なんだな」と思ってもらって……それがまた次のステップにいけるというのはすごく良いと思うんですよね。

加藤:そうですね。ほんとにちょっとずつですけど、一人暮らしに向けて、動いている姿を家族に見せて、本気なんだなと思ってもらえるようにするのはとても大事だと思っています。具体的には、介助の時間数を増やしていったり、それにあたっての役所等との交渉だったり、ヘルパーさんとの関係づくりだったり。そういったことを一つ一つ、家族に頼るんじゃなくて、自分自身で汗水たらしてやっていく。そうすることで、一人暮らしに対する本気度、本当に一人でやっていけるよ、ということを家族に分かってもらえるように頑張っていきたいです。周りに期待するだけじゃなくて、自分が少しずつでも周りに求めすぎずに動いていけるといいな、と思っています。本当に少しずつかもしれないですけどね、出会った人たちの力を借りて、ちょっとずつ。

 

行政との交渉について…
人間として、当たり前のことをしたい

――やはり、行政との交渉自体を自分でやれたという経験は大きいですよね。

加藤:そうですね。先輩のサポートも「こういうふうに言うといいよ」という具体的な提案も含めて、とても大きかったですね。

――ちなみに実際にやってみて良かったな、効果的だったなという交渉の仕方はありますか?

加藤:両親も働いているので、ヘルパーさんに入ってもらうまでは学校が休みの時は家に一人になってしまって、 ずーっと何時間も座りっぱなしになっちゃってたんですよね。だから、両親がいても共働きで介助ができないんだ、その間長時間座りっぱなしになってしまうこと、トイレに行けないことなど、どういうところが困るのかをはっきりさせる。それで、だからこそ、普通の人と同じように生活するためには、ヘルパーさんに来てもらう必要があるんだということを伝えることです。トイレに行くのも権利の一つとしてあるでしょう、それを保証しないのかと。権利というか、人間としての当たり前のことをするために必要なんだって。人間としての権利がどうして障がい者には守られないんだとか、そういう言い方をすると相手に響くという気はします。これは決して、大袈裟ではなくて本当にそうなのですから、きちんと主張することが大事だな、と感じました。

――それはすごく大事な視点ですね。しっかりした事実というか、実際に本当に困ってることをちゃんと相手に伝えるのは、とても大事ですね。天畠さんも時々言ってますけど、自分の障害が困りごととして現れるときは幅があって、なんとかなる時とどうしようもならない時がある。それがやはり振り幅としてどうしてもあって。それで、ついつい遠慮して、なんとかなるときの状態のことを言ってしまうこともあるけど、でも実際なんとかならないときのことに備えて介助が必要なわけですよね。そこをちゃんと伝えることが必要ですよね。

加藤:なんとかなるときと、ならないときっていうの、本当にあるなって思います。コップを上手く持てるときもあれば、持てない日もある。本来なら届く位置に置いてあるけど、緊張が強くて取れない位置になって水分が飲めなくて困っちゃうとか。そういう微妙な、できる日とできない日があるなと思います。

――「この日はできたんだから、他の日でもできるでしょう」と思われがちだけど、実際そうではないですよね。

加藤:他の日もね、いつも同じようにできるんじゃないかと思われがちだけど、そうじゃないときありますね、多々ね。

――そのようなかたちで交渉するなかで、今の介助の支給時間数になったのですね。今後はやっぱり働くことと、あとは一人暮らしという両面、どちらを先に、どうやってステップを踏んでいくかというところを今、悩まれているという感じですかね?

加藤:自分で言うのもあれですけど、私は気を遣ってしまうタイプなので、ヘルパーさんが長時間入ることによって、ずーっと気を張ってしまって。どうやってその辺の、気になってしまう私の性格と付きあって、ヘルパーさんと上手く関係を築いていけるのか、今悩んでいます。今は、ヘルパーさんに気を遣って、家族にもまた気を遣ってという状況なんですね。だから疲れないように敢えて気を休めるために、今はヘルパーさんを入れてない時間も作っている状態なんですね。一人暮らしするとなると、ヘルパーさんがいない時間を作ることによってのリスクを考えないといけないから、やっぱりずーっといてもらったほうがいいのかとも思って。なかなか難しいなと思いますね。一人暮らしをすれば、家族に気を遣わず、私とヘルパーさんとの関係性だけで、生活を組み立てられると思う一方、そういう葛藤もありますね。でも、一人暮らしは絶対にしてみせます!

――加藤さんとしては、介助の支給時間数はまだまだ足りてないなぁという感じですか?

加藤:そうですね。一人暮らしするには、まだまだ全然足りないし、今は私自身は足らないけれど、家族にとってはどうなんだろうか、という天秤にかけると、一概に増やすことがいいのか、悩ましいところではあるんですよね。

今、自分のペースの中で、自然と見えてきた未来。

――天畠さんご自身も自伝で書かれてましたけど、やっぱり大学卒業後の自分の居場所をどう作るかはとても大切なことですよね。

加藤:そうですね。今、私は働きたいというのが、すごくありますね。誰かの役に立ちたいなぁというのはずっと変わらない思いです。

――その点、大事ですよね。自分の仕事や活動があって、自分が役に立つ場所がある。その上で一人暮らしするなら、自分の気持ちも違ってきますよね。そうしないと世界が狭くなってしまいますよね。一人暮らしをすることで、逆に会う人が少なくなるということも聞きます。

加藤:ああ、一人暮らしをして、他にやることがなくて、ヘルパーさんと私だけの関係になってしまうということですよね。

――はい。特に今コロナの状況もあるから、普段できることもできなくなって、つらいという話も聞いたりします。じゃあ今、加藤さんの将来の夢として考えているのは、働くことと、一人暮らしをしながら介助を受けるということなんですかね。

加藤:うん、そうですね。働くのが先か一人暮らしをするのが先か、何からまずやっていこうかというのはあるんですけど。まずその二つが私の今後の目標としてあります。でもまたそういうのに頑張りすぎてしまったら、前みたいに、何にも気力がわかない状況に陥ってしまうのも嫌なんです。だから、程よく頑張れるように自分との付き合い方、自分との折り合いのつけ方も意識して、無理しすぎず、周りと比較せず、焦らず、自分のペースでできたらなと思います。あとはいろんな人と繋がって、ゆっくり一つずつ。課題というかね、重なっている部分も含めてそれに一つずつ取り組んでいけたらいいと思います。時間はかかるかもしれないけど、それはそれでいいのかなと思ってますね。

――ありがとうございます。どこに基盤を置き、どこからスタートさせていくと、着実にステップアップしていけるかは、自分だけではなかなか難しい部分がありますよね……。だからこそ、ご自身の考えや困りごとを共有できるような人が周りには必要なのかもしれませんね。 そして、自分のペースを掴んでやっていくこと。今回、加藤さんのお話からそんなことを学んだような気がします。

プロフィール

脳性麻痺・板橋区在住|加藤舞(かとうまい)

1996年生まれ。社会福祉士。板橋区在住。脳性麻痺による、四肢体幹機能障害、痙直型。日常生活のほぼ全てに介助を要する。小中高と特別支援学校に通い、ルーテル学院大学へ進学。2018年3月卒業。現在は、家族と同居中。将来は一人暮らしを考えている。2018年11月から、ヘルパー利用を開始。2019年4月に、現在の居宅介護と重度訪問介護の利用体制に落ち着く。 2019年1月から、「ユニラボねりま」で地域活動中。趣味は、ご当地ベアのコレクション、J-Pop音楽を聴くこと。ジャニーズ(特に嵐、King & Prince)、Official髭男dism、SEKAI NO OWARI、三浦大知、星野源、米津玄師、あいみょん等々を聴く。コロナが落ち着いたら、一緒にライブに行ってくれる人を探し中。今までライブに行ったのは、高校生の時で、EXILEのライブに1度だけ。ディズニーも大好き。

文/山﨑彩恵

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