重度訪問介護制度

重度訪問介護制度

重度訪問介護とは?

重度訪問介護制度をご存じでしょうか? これは、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスで、重度の障がい者が地域で自分らしく暮らすための、大変重要な制度です。

この制度は、在宅生活を送る重度障がい者(障害支援区分4以上)を対象としています。対象者は必要に応じて、入浴・トイレ・食事の介助、調理、洗濯、掃除などの家事、外出するときの移動介助、そのほか、見守りを含めた生活全般の介助を必要に応じて受ける事ができます。また、長時間の利用を前提としているため、場合によっては1日24時間介助またはそれ以上の介助(二人介助)を受けることができます。

このように、当事者にとって重要な制度である一方、この制度を熟知しているか、どう使いこなすかによって、重度の障がい者自身の生活は180度変わると言っても過言ではないのです。

では、どうして制度の理解度の違いによってそのような差が生まれてしまうのか? それは、この制度のもつ三つの特徴が大きく関わっています。

特徴1【支給時間の交渉が必要】

一つ目は、この制度が申請主義を基盤としている点です。つまり、当事者みずからが支援の必要性を、自分の住む自治体に訴えることによって、はじめて支給決定が下りるのです。例えば、家族が就労しているから、もしくは両親が高齢であるから介護が難しいことを理由に、月に何時間の公的な介助保障が必要であることを、居住する市区町村の障害福祉課に説明し、当事者自身で支給を申し入れる必要があります。

疾患の程度によって一律に、自動的に介助サービスが支給されるものではありません。言い換えれば、こういう生活を送りたいという当事者の強い意思によって支給時間を大幅に伸ばすこともできます。

特徴2【限定されない介助内容】

二つ目は介護保険のサービスのように、家事や体のケアについての介助内容の限定がないことです。日常生活に生じるさまざまな事態に対応するための見守り業務も含まれます。ですから、介助サービスの支給時間の中で、介助者にどのようなことをサポートしてもらうのかを当事者が自由に決めることができるのです。

ただし、就学や就労に関しては規制があり現在、問題となっています。たとえば就学においては、「重度訪問介護利用者の大学就学支援事業」が2017年からスタートし、それまでできなかった通学時の重度訪問介護の利用が部分的に利用できるようになりました。

しかしこの制度自体がまだまだ認知されておらず、当事者自身が大学・行政側と交渉していく必要があるなど、ハードルがあります。

特徴3【自薦ヘルパーも選べる】

三つ目は、介助者を自分で選ぶことが可能であることです。いわゆる自薦ヘルパー制度というものです。一般的にイメージされる介助者は、当事者が地域の介助者派遣事業所を選択し、介助者の勤務シフトやどの介助者を派遣するかは事業所が決めます。一方、自薦ヘルパーの場合は、勤務シフトの作成などは当事者が直接介助者と連絡を取って行うため、当事者は自分の予定を比較的自由に組み立てやすくなります。また、介助者の指導や育成も当事者の責任で行います。負担は大きいですが自分に合ったケアを受けやすくなるというメリットがあります。

重度訪問介護の利用者の中でも、通常の事業所派遣型の介助者を利用している方がほとんどですが、希望すれば自薦ヘルパーを利用して自立生活を組み立てることもできます。

また、自薦ヘルパーのもう1つのメリットとして、「家の近くに介助者派遣事業所がない」方にも利用できる制度があります。たとえ支給時間を獲得できたとしても、介助者を派遣してくれる事業所が家の近くになければ、自立生活は成り立ちません。しかし、自薦ヘルパーならば、登録先の事業所(遠方でも構いません)と、自ら介助者を見つける努力さえできれば、克服することが可能です。

【当事者事業所という選択肢も】

以上が重度訪問介護の3つの特徴です。この3つに加えて、「当事者事業所」を起業・運営することで、より自由度の高い暮らしを実現する当事者の方々も大勢います。

当事者事業所とは、「重度訪問介護を利用する障がい当事者が運営する介助者派遣事業所」のことをいいます。先に説明した自薦ヘルパーも、自ら介助者を採用、育成することができますが、一方で時給などの待遇は、自薦登録先の事業所のルールによって決められる場合があります。当事者事業所を運営することで、当事者と介助者がお互いの生活を責任を持って大事にしあうことができ、介助者との関係を深められる、自由度の高い選択肢だといえるでしょう。また、当事者自身が事業所の経営者となることで、それが生計を立てる手段となり、経済的な自立にもつながります。

一方で、介助者を法律に則って雇用する重い責任も発生します。つまり、介助者の生活を保障するという強い責任感も生まれるということです。経営者として会社を運営していく能力・スキルを当事者は身につけていく必要があります。

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地方在住のALS当事者のAさん